無知蒙昧なセンテンス

その辺の社会人が色々なものの言語化を試みる場です。

哀れなるものたちを観た 2402某日

すごい映画だった。以後ネタバレを含みます。 あとあくまで個人の感想です。






自殺した妊婦がマッドサイエンティストに拾われ、お腹の中の赤ちゃんの脳みそを入れて蘇生する。身体は大人の女性、脳みそだけ赤ちゃんのキメラとして生きていく、というお話。 社会の理や倫理、信仰を一切知らないまま、精神と身体の釣り合わないその人は育っていく。その中で抱く純粋な好奇心に従い、世界を冒険する。この純粋な好奇心がとにかく痛々しくて、観ている間ずっと辛かった。おれは好奇心を美しいものだと思っているし、知ることを尊いこととして生きているが、だからこそ無垢な好奇心の持つ残酷さが際立って刺さった。

初めてオナニーをしたらとても気持ちよかったからそれを幸せだと思い、ひたすらセックスをする。その信念を遠慮なく上流階級の淑女にぶつけ、「なんでセックスしないの!?」「でもひとりではするのね、安心したわ」と勝手なことを言う。
初めてスラム街の人を見て、自分のパトロンの金を根こそぎ奪ってばらまく。パトロンに怒られた際に「あの人たちが死んじゃう……」と泣きじゃくる。 他にも色んなシーンで彼女の無垢から起こる活動が社会に人に牙を剥き、最後は自分を縛りつけようとした軍人に人体改造を施しペットとして飼い、彼女は楽しげに本を読むシーンで終わる。

全体を通して、おれが信念として掲げてきた好奇心・知ることに対するリスクを見せつけられたようだった。知りたいから知るを繰り返した結果、精神は成熟し知性を獲得が人道からはズレたままの主人公の様は、本人は満たされるかもしれないが社会的には破滅だった。 もっと言葉を選ばず主観で言うと、自分の信念が社会的に否定されたような感じがして、ほんとうに辛かった。無垢から来る好奇心は破滅をもたらすかもしれないよ、社会的に生きる上で好奇心を全面に出すのは難しいんじゃないの、と言われたようだった。観終わってかなり落ち込んでしまった。

じゃあ観なきゃ良かったのかというと、観てよかったなとは思う。好奇心の新しい側面に触れられたし、映像表現や演技、音楽はとても良かったし。

でも疲れちゃったから今はスカッとする活動がしたいなという気持ちになってる。カラオケにでも行こうかしらね。