無知蒙昧なセンテンス

その辺の社会人が色々なものの言語化を試みる場です。

爪爪爪

何となく長い文を書きたいという気持ちでやっているこのブログだが、長い文は書くのにそれなりに時間がかかるのでなかなか書き出す気力が湧かない。ちょくちょく書きたくなることはあっても、時間無いかな…とか思ってると結局書かずに終わってしまう。とはいえこういう類のものは一旦書き始めれば案外忙しくても書ききれると相場が決まっているのだが(知らんけど)、書き始める前に億劫になるのだ。やり出せば意外とやれる、という心理状態を「作動興奮」と言うらしいが、自分にとってのブログはまさにこの心理が働いているのだろう。ちょうど作動興奮してきたような気がする。

ワンパンマンという漫画がめちゃくちゃ好きで、基本的に同じコンテンツを2回以上体験しないスタンスなのに実質2周している。ネタバレも気にせずざっくりとストーリーを話すと、死ぬほど強い主人公がどんな敵でもワンパンでボコしていく、というシンプル極まりない無双漫画である。そこそこ強めのギャグ要素と主人公のゆるいキャラ、そして1発で終わる爽快感抜群の戦闘は読んでて本当に気持ちが良い。主人公は常に物足りない顔をしており退屈そうにしてて、それでいて全く傲慢になってないのが何とも面白い。無気力に無双している。
この無気力さについては、あまりに強いと周りに力を誇示しても周りから畏怖され孤立するから傲慢にはならないということなんだと思ってる。ちょっと優位なレベルだったら力を見せつけて自分の優位性を確かめたくなるだろうけど、明らかに優位だと確かめる必要がないし、力を見せることで距離を置かれ孤独感が増すんじゃなかろうか。それなら無気力でいた方がましなんだろう。
主人公が敵を倒す時、あまりに呆気なく戦闘が終わるせいで少し寂しい表情をすることが多いが、この表情がとある友人の時々見せる表情と妙に重なる。その友人はとにかく数学が得意で、ろくに勉強してなくても数学だけは成績が良かった。本当に勉強量が少ないのか、割と計算ミスで点数を落としてることがあった気がする(それでも数学の成績は相当良かった)。彼と模試や大学入試の問題の話をした時、頻繁に寂しい表情をすることがあった。こっちが彼の数学の話についていけなくて、彼はどこか寂しそうな顔をする。その顔は自分の満足行くレベルで話ができないことを嘆いているようだった。
これはどことなくワンパンマンと似ているんじゃないか。明らかに周りより数学ができて同じ土俵にいる人がほとんどいないから孤独なのだろう。彼は「この問題○○で終わりじゃん」と一言で言い放つことが多かったが、これなんかは完全に数学をワンパンしている。その一言で彼にとっては問題が解けているのだろうが、聞いてる身としてはほぼ何もわからないのである。もはや異次元、と言った感じだった。
(その友人はともかく)ワンパンマンの主人公は作中でその強さをあまり知られていない。圧倒的に強い割に知名度はかなり低く、評価も全然高くない。先述したように力を誇示しないからだろう。能力がとてつもなく高いとあまり力を見せる気にはならないのだろう。まさに「能ある鷹は爪を隠す」だ。いや、この場合「能ありすぎる鷹は爪を出す気にならない」の方が正しいか。いずれにせよ、その能力が広く知られることはない。


こういう「圧倒的な力」をリアルで目の当たりにすると、少し羨望もするがとにかくワクワクしてしまう。嫉妬や絶望といった負の感情は抱かず、ひたすらにワクワクする。この人はどれくらいのことまで出来てしまうんだろう、どれだけ自分と離れた場所にいるんだろう、と想像するだけでも楽しい。非現実が目の前にある。バカみたいなスペックを身近に感じられる。すごい(小並感)。極端に言ってしまえば、漫画やアニメの世界が現実にやってきたような気分になる。楽しくないわけがないんだよな。
その一方で、平凡(そう)だけど凄まじい努力とかストイックさとかで「圧倒的な結果」を出す人を見てもワクワクはしない。圧倒的な力で結果を出してる人にはワクワクできても、物凄い努力が滲み出るような雰囲気にはワクワクできない。もちろん、めちゃくちゃ努力したりストイックに己を追い込めることはすさまじい力だと思うし、間違いなく「圧倒的」だしすごい事だし尊敬してるんだけど、やっぱりワクワクはしない。
一時期戦国時代にハマって武将の伝記を読み漁ってたことがあるが、そういう時も「能力はあったが環境に恵まれず天下統一は出来なかった/天才だったが表舞台には立てなかった」系の武将の方が魅力的に見えた。伊達政宗然り、津軽為信然り、鍋島直茂然り、立花道雪然り… 徳川家康の忍耐力はすごいし、豊臣秀吉のバイタリティも半端ない。けど、やはりワクワクするのは前者の武将なのである。浮世離れした(まあ家康も秀吉も浮世離れはしてるけど)能力に魅了されてしまうのである。

圧倒的な力を持つ者と、圧倒的な結果を出す人。両者の差を一言で言ってしまえば、圧倒的な力を持つ人は異次元として認識していて、努力で圧倒的な結果を出す人は同次元として認識している、てことなんだろう。異次元ってワクワクするじゃん。リアル感が薄いとワクワクするじゃん。未知だからワクワクするじゃん。でも同次元はあくまで現実なんだよ。尊敬はしても何で結果を出せるかが分かっちゃう。分かるってことはリアルなわけで、そこに新しさはあんまりない。分からないから、前者には魅力がある。


こういう人が確実に今現在もどこかにいると思うと、ワクワクが止まらない。