無知蒙昧なセンテンス

その辺の社会人が色々なものの言語化を試みる場です。

砂の惑星から見えてくるボーカロイドというコンテンツ


ハチ MV「砂の惑星 feat.初音ミク」

(↑本家動画youtube.ver)

 

初めまして、さみっとと申します。

 

今回は、ハチさんの新曲にしてニコニコ動画に投稿されてからわずか6日5時間19分(全ボカロ曲の中で最短!すごい!)でミリオンを達成した砂の惑星について完全主観でつらつらと考察をしていきたいと思います(すでにいろんな人が考察してるのであんまり新鮮味はないかもしれないですね…)

こんなタイトルつけといてアレですが、内容は普通に砂の惑星の考察です・・・

 

1.全体的な考察

まず、歌詞はこんな↓感じ(初音ミクWikiより引用)

 

何もない砂場飛び交う雷鳴
しょうもない音で掠れた生命
今後千年草も生えない 砂の惑星

 

こんな具合でまだ磨り減る運命
どこへも行けなくて墜落衛星
立ち入り禁止の札で満ちた 砂の惑星

 

のらりくらり歩き回り たどり着いた祈り
君が今も生きてるなら 応えてくれ僕に

 

イェイ今日の日はサンゴーズダウン
つまり元どおりまでバイバイバイ
思いついたら歩いていけ
心残り残さないように

 

イェイ空を切るサンダーストーム
鳴動響かせてはバイバイバイ
もう少しだけ友達でいようぜ今回は



そういや今日は僕らのハッピーバースデイ
思い思いの飾り付けしようぜ
甘ったるいだけのケーキ囲んで
歌を歌おうぜ

 

有象無象の墓の前で敬礼
そうメルトショックにて生まれた生命
この井戸が枯れる前に早く
ここを出て行こうぜ

 

ねえねえねえあなたと私でランデブー?
すでに廃れた砂漠で何思う
今だパッパパッと飛び出せマイヒーロー
どうか迷える我らを救いたまえ

 

ぶっ飛んで行こうぜもっと
エイエイオーでよーいどんと
あのダンスホール モザイクの奥
太古代のオーパーツ
光線銃でバンババンバン
少年少女謳う希望論
驚天動地そんで古今未曾有の思い出は電子音

 

戸惑い憂い怒り狂い たどり着いた祈り
君の心死なずいるなら 応答せよ早急に

 

イェイきっとまだボーイズドントクライ
つまり仲直りまでバイバイバイ
思い出したら教えてくれ
あの混沌の夢みたいな歌

 

イェイ宙を舞うレイザービーム
遠方指し示せばバイバイバイ
天空の城まで僕らを導いてくれ



歌って踊ろうハッピーバースデイ
砂漠に林檎の木を植えよう
でんぐり返りそんじゃバイバイ
あとは誰かが勝手にどうぞ

 

歌って踊ろうハッピーバースデイ
砂漠に林檎の木を植えよう
でんぐり返りそんじゃバイバイ
あとは誰かが勝手にどうぞ



イェイ今日の日はサンゴーズダウン
つまり元どおりまでバイバイバイ
思いついたら歩いていけ
心残り残さないように

 

イェイ空を切るサンダーストーム
鳴動響かせてはバイバイバイ
もう少しだけ友達でいようぜ今回は

 

風が吹き曝しなお進む砂の惑星

 

歌詞を全体的に見ると、今まで投稿されてきたすべてのボカロ曲が砂の惑星 に例えられていて、ボーカロイドというコンテンツの盛衰を言葉巧みに表してますね。その中にハチさん自身のボーカロイドへの思いが込められてる感じがします。特徴的なのは、命令形が多いこと。ハチさん(もしくは米津玄師さん)らしいですね。なんとなく、命令形だと聞き手が歌詞の世界に入っていきやすい雰囲気があります。この辺りもヒットの一因でしょうか。。

動画に出てくるミクはいわゆる ”初音ミク” に比べてかわいさの要素が少なく、終始笑顔を見せず後ろの18人と共にひたすら前を見て突き進んでます。この厳しい表情はミクの置かれている現状が前ほどよくないことを示してる気がします(悪く言っちゃえば、もうチヤホヤされてないってことですね)。動画は基本的には「惑星を歩き続けるミクと後ろの人達」という構図で、これはずっとボーカロイド界を引っ張ってきたミクと彼女に率いられる人達(=ボカロP)が惑星(=ボーカロイド界全体)を歩いている、つまり作曲活動している様子を比喩してるんじゃないでしょうか。この後ろの人達はボカロPとリスナー両方含まれている気もしたのですが、皆似たような格好をしてるのでボカロPだけのように思えます。

惑星は砂が舞っていてかなり退廃的な雰囲気。これは現在のボカロ界の雰囲気をそのまま反映させていて、最盛期に比べたらかなり衰退してる現状を表してるのでしょう。オマージュの部分で出てくる ”よく見るミク” の姿やその時の雪景色(雪が積もる=それだけたくさん水がある、てことでここでは豊かさの象徴になってるんだと思います)とは対照的な光景ですね。この惑星では水や植物、雷、雪といった物がボーカロイドが栄えることの象徴になっていて、逆に砂・砂漠やケーキの形をしたガラクタの山、点在する遺跡といった物が廃れることの象徴になっているんだと思います。

とまあ、ざっとこの曲の舞台設定の話をしてきましたが、内容についてもざっくりと触れとこうと思います(内容というよりはボカロをどう捉えているか、という話です)。この曲のスタンスとして、基本今のボーカロイドは昔より廃れたコンテンツであり、再び最盛期並みに盛り上がることはほとんどないと言っているような印象を受けます。かといって完全に否定的なのかと言われればそうでもなく、きっかけさえあれば今より盛り上がっていくよ!まだまだボカロも捨てたもんじゃないぜ!って言ってるような気がします。あわよくば最盛期レベルに盛り上がって欲しい・盛り上がれぇぇという願望もありそうですね。

ここまで全体的な話をごちゃごちゃと言ってきましたが、要は、この曲の舞台は昔ほどの勢いや人気のない今現在のボーカロイドの世界もっと盛り上がろうぜっていう内容なわけです。

ここからは動画と歌詞を合わせて細かく考察していきたいと思います。

 

2.細かい考察

・冒頭~イントロ部分

砂だらけの惑星、砂埃から現れるミクと18人のマスクを被った人たち(ボカロPと)

ミクの表情は真顔で、苦労を重ねてきたようにも見える。端的に今のボカロ界を描いてますね。

 

・1番Aメロ
何もない砂場飛び交う雷鳴
しょうもない音で掠れた生命
今後千年草も生えない 砂の惑星
こんな具合でまだ磨り減る運命
どこへも行けなくて墜落衛星
立ち入り禁止の札で満ちた 砂の惑星
  • 現在のボカロ界の廃れ具合を淡々と歌ってますね。ここでの「雷鳴」は豊かさの象徴というよりはただ天候が悪い(=現状があまりよろしくない)といったニュアンスでしょうか
  • 「生命」はボカロ界全体の活気で、活気のない今を「掠れた」と表現しているんですかね
  • 「今後千年草も生えない」「立ち入り禁止の札で満ちた」砂の惑星。かなり現状を否定的に見てます。立ち入り禁止は廃れたことで建物が壊れて入れないという意味でしょうか。いずれにしても廃れてしまったんですね。
  • 動画に出てくる遺跡のようなものやアイドル風のミクが描かれたボロボロのポスターも退廃的な雰囲気を助長させます

 

・1番Bメロ

のらりくらり歩き回り たどり着いた祈り
君が今も生きてるなら 応えてくれ僕に

  • 砂の惑星を歩く、というのは曲を投稿することで、様々な曲が投稿されても最盛期の盛り上がりには遠く及ばない。その結果ただ再生されることを「祈る」
  • 「君」=リスナー(もっと広くコンテンツを盛り上げる人全員を指しているかも)達 がいるのなら、「僕」=曲 を聞いてくれ、という祈り。

こんな感じでしょうか。

 

・1番サビ

イェイ今日の日はサンゴーズダウン
つまり元どおりまでバイバイバイ
思いついたら歩いていけ
心残り残さないように

 

イェイ空を切るサンダーストーム
鳴動響かせてはバイバイバイ
もう少しだけ友達でいようぜ今回は
  • 今日はもう「サンゴーズダウン(Sun goes down.=日が沈む)」 、つまり夜になった。これは今が暗い衰退期であることを歌ってます。またあの日の勢いが戻ってくるまではバイバイ、暗いままってことでしょうか。
  • それでも歩けといってます。Bメロのとこで言ったように歩く=楽曲投稿なので、今が衰退してても曲を出し続けろ、と歌ってます。
  • 「空を切るサンダーストーム」は瞬間的にヒットした一つの曲。一時的に伸びてもそれに続くようなヒット曲はなかなか出てこず、「鳴動」を響かせたらまた「バイバイ」してしまう。
  • 「今回」はもっと長い間伸びたり別のヒット曲が続けざまに出てほしい、てのが「友達でいる」ってことだと思います
  • 動画で新しいポスターを貼ろうとしてる人がいますが、これはマイリス登録やコメントを打ってくれる積極的なリスナーのことだと思います。ただそういう人が全然いないから貼ったそばから剥がれて飛んで行ってしまう。つまり曲が継続的には伸びない。
  • 「空を切るサンダーストーム」のシーンで雪景色とリンゴの木が出てきて、そのあとすぐにまた砂漠に戻ります。これは曲が出て伸びてる瞬間だけ昔の盛り上がりを思わせることを表現しているのでしょう。

 

・2番Aメロ
そういや今日は僕らのハッピーバースデイ
思い思いの飾り付けしようぜ
甘ったるいだけのケーキ囲んで
歌を歌おうぜ
有象無象の墓の前で敬礼
そうメルトショックにて生まれた生命
この井戸が枯れる前に早く
ここを出て行こうぜ
  •  ここでいう「ケーキ」は過去の楽曲たち。動画では無造作に積みあがってます。「僕ら」=色々なボカロ楽曲 の、「ハッピーバースデイ」=投稿日 に「思い思いの飾りつけ 」=曲ごと自由に祝う。聞く人がたくさんいるからいろんな曲が伸びる「甘ったるいだけのケーキ」、それを囲んで歌うのはこれまた色んな歌い手たち。つまり、”あの頃” の一風景というわけです。
  • 「有象無象の墓」=”あの頃” 伸びてた曲も今やほとんどが再生されずに埋もれてる
  • 「メルトショック」=ニコニコにメルトが投稿されたときの二次創作を含めランキングのtop10に複数メルトが入った、あの頃から盛り上がり始めたボーカロイド。その勢いもいずれは途絶えるなら、そうなる前に出ていかないと廃れてしまう。
  • 「この井戸」は炉心融解のオマージュかもしれませんね

 

・2番オマージュ部分
ねえねえねえあなたと私でランデブー?
すでに廃れた砂漠で何思う
今だパッパパッと飛び出せマイヒーロー
どうか迷える我らを救いたまえ
ぶっ飛んで行こうぜもっと
エイエイオーでよーいどんと
あのダンスホール モザイクの奥
太古代のオーパーツ
光線銃でバンババンバン
少年少女謳う希望論
驚天動地そんで古今未曾有の思い出は電子音
  • ここで様々な過去の曲のオマージュが出てきます。ざっくりいうとこういった曲が流行った時代は今はもう過去の話だよってことです
  • オマージュ部分は色々と考察されてますが、過去の大ヒット曲が並んでると思うので個人的には出てくる順にマトリョシカ、パンダヒーロー、ワールズエンド・ダンスホール、モザイクロール、千本桜、チルドレンレコードかな~と思ってます
  • 動画もこの部分ではミクがかわいらしい雰囲気になり、一面の雪景色やリンゴの木、鳴り響く雷鳴は盛り上がってる様を描いてるんだと思います。砂漠の映像とは対照的ですね
  • リンゴの木はなぜか右側にしか実がなってないみたいですが、ここはよくわからなかったです・・・

 

・2番Bメロ

戸惑い憂い怒り狂い たどり着いた祈り
君の心死なずいるなら 応答せよ早急に

  • 「戸惑い憂い怒り狂」ったのは恐らくボカロPやリスナーたち。全然動画が伸びない、コメントもつかないといった ”あの頃” からの変化に対しての感情でしょう。
  • ここでの「君」はそうしたボカロPやリスナーたちへの激励のように感じます。動画を見るとこの部分でミクが「有象無象の墓」と決別し前へと進んでいます。これはボカロPやリスナーにもそうあってくれというメッセージなのではないでしょうか。ただ、ここの「君」はボカロPだけを指すかもしれないです。

 

・2番サビ
イェイきっとまだボーイズドントクライ
つまり仲直りまでバイバイバイ
思い出したら教えてくれ
あの混沌の夢みたいな歌
 
イェイ宙を舞うレイザービーム
遠方指し示せばバイバイバイ
天空の城まで僕らを導いてくれ
  • 「きっとまだボーイズドントクライ(Boys don't cry.=あの子たちは泣かない)」で、「ボーイズ」はボカロ界に関係する人全員(ボカロP、リスナー両方)を指している気がします。泣くというのはボカロPやリスナーでいるのをやめること、「仲直り」は復活や投稿し続けるなどでボカロPとして曲を出すこと、リスナーとしてまた曲を聞き出すこと、のような気がします
  • 「あの混沌の夢みたいな歌」は、色んなボカロPがヒット曲を多数出し、常に新しい曲が出てゴチャゴチャしていながらも活気に満ちていた頃の歌、という感じでしょうか。あの雰囲気を思い出すのは作る側だけでなく聞いて盛り上げる人も含まれているんじゃないでしょうか。
  • 「レイザービーム」もまたヒット曲の比喩で、遠方=ここではないどこか を指しては消えて=廃れて しまう。そんな現状を見てその方向、つまりボカロ界が活気づいた状態まで皆を導いてくれ、という祈り。

 

・Cメロ

歌って踊ろうハッピーバースデイ
砂漠に林檎の木を植えよう
でんぐり返りそんじゃバイバイ
あとは誰かが勝手にどうぞ

×2

  • 昔みたいに動画にコメントしたりマイリス登録したりしてお祝いをしよう。一人のコメントや一曲がきっかけになるかもしれないから、少しでも活動をしよう。一人が投稿さえすればあとは色んな人たちがボカロ界を盛り上げてくれるはずさ。

て感じだと思います

 

・ラスサビ
イェイ今日の日はサンゴーズダウン
つまり元どおりまでバイバイバイ
思いついたら歩いていけ
心残り残さないように

 

イェイ空を切るサンダーストーム
鳴動響かせてはバイバイバイ
もう少しだけ友達でいようぜ今回は

 

風が吹き曝しなお進む砂の惑星
  • 最後以外は1番サビと同じ。ですが流れ的にここではボカロPだけでなく、ボカロ界にいる人全体に対して歌っているかもしれません。そうなると「歩いてい」くのはボカロPだけでなくボカロ界の全員で惑星を盛りあげる、そして「サンダーストーム」はヒット曲ではなくボカロ界全体の瞬間的な盛り上がり、「もう少しだけ友達で」いるというのはその活気がもう少し長く続いてほしいというニュアンスになってくるんじゃないでしょうか。
  • 最後はこの歌を一文で綺麗に締めています。やはり現状はまだまだ活気が少ないけど、いつかまた盛り上がる時を待って今日も砂の惑星は活動をしていく。
  • このあたりは動画にかなり変化があります。まず、ラスサビ開始直後で分かれ道があり、後ろの人達のうち二人が別れていきます。この人たちはボカロP を引退する人で、バンドマンに転身したり全然別のことをやったりするのでしょう。
  • 次に、花の顔をした人がミクとじゃれあい、後ろの人に抱きつくシーンがあります。ここでのミクの表情は依然厳しいままなので、別のボーカロイド(=仲間)ではないと思います。そしてボカロPに抱きついていることからボカロPと親しい関係の人です。個人的にはボカロPにとっての”声” の役割を担うボーカルに相当する人なんじゃないかと思います。今までボーカロイドを使って作曲していた人が生の人にシフトする、つまり楽曲提供やバンド活動といったボカロから離れた活動をするようになるということを表している気がします。
  • ラスサビの最後の一文のシーンでかわいらしい方のミクがリンゴを持ってる部分がありますが、何となくこれは再び活気づいた未来のミクのような気がします。この時のミクはリンゴの大切さに気づきそれを大事そうに抱えています。おそらく昔のミクはこんなことをしないでしょう。姿こそ昔と同じですが様々な経験を経て存在するという意味では全く違うミクなんだと思います。
  • 後奏の部分で砂の奥に見える人影は未来のボカロPでしょう。いつかミクと出会い、ボカロ界をにぎわすかもしれない人達です。
  • そして動画は最後、有象無象の曲の積み重ねでできた大きなケーキを映して終わります。このケーキこそ、ボカロをボカロたらしめる存在なのかもしれません。。

 

どうでしょうか。。。一通り言いたいことは言えたと思います。

 

3.あとがき

ここまで読んでくれて本当にありがとうございます!気づいたらめちゃくちゃ長くなってしまいました…

今回がっつりと考察したわけなんですが、 納得いく解釈をするのって難しいですね(;´д`)

曲の捉え方は人それぞれですし、自分でもここは別の解釈もできるかも。。とか思ったりもしたので、あくまで一つの例として見てもらえるとありがたいです

 

最初の記事から超長文になってしまいました…今後は不定期更新で、気が向いたらまた何か書くかもしれません(書くとしたら全然違うテーマかもしれません) 。この辺で終わりたいと思います。

では!